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ハワイ不動産の相続手続きと税金に関する2つのポイントを紹介

ハワイ不動産の相続手続きと税金に関する2つのポイントを紹介

近年、ハワイをはじめ外国に不動産を持つ方が増えています。そこで気になるのは、万が一のことがあった際に「不動産の相続手続きは一体どのように行うのか」また「相続税の納付において損をしない方法はあるのか」といった疑問ではないでしょうか。

この記事では、不動産の相続における日本とハワイの違いやアメリカの相続手続き「プロベート」について解説します。ハワイに不動産を持つ方は知っておきたい金銭が絡む重要なテーマとなりますので、ぜひ参考にしてみてください。

不動産の相続における日本とハワイの考え方の違い

日本では不動産を相続する場合、裁判所は介入せずに相続人(財産を受け継ぐ人)のあいだで分割手続きを行います。このような相続方法は、包括承継主義と呼ばれフランスやドイツ・イタリアなども同じです。一方、アメリカにおいては裁判手続きを行います。管理精算主義と呼ばれるこの相続方法は、イギリスやカナダ・オーストラリアなどで採用されています。

また、日本で暮らす日本人が死亡した場合、被相続人(財産を残して亡くなった人)の本国法である日本の法律が相続に適用されます。アメリカでは基本的に「被相続人が意思を持って定住していた場所」の法律が適用されますが、例外として不動産は物件所在地の法律が適用されるので注意しましょう。 

このような違いがあるものの、日本人がハワイに不動産を残した状態で死亡するケースでは、該当する不動産については米国法にのっとり相続手続きを進める必要があります。

ハワイ不動産の米国法による相続手続き「プロベート」を解説

アメリカの相続手続きは「プロベート」と呼ばれます。これは、相続人が財産を譲り受けるために必要な裁判手続きです。プロベートでは以下に挙げるような手続きを行わなければならないため、数年単位の時間と多額の費用がかかります。

  • 遺言書チェック
  • 相続人確定
  • 債務清算
  • 申告納税
  • 遺産分配

そのため、可能な限りプロベートを行わずに済む方法を知り、相続が発生する前にできることがあれば準備しておくことが重要です。

たとえば、通常プロベートには1~3年ほどかかるとされており、そのあいだ遺産の管理処分が自由に行えません。また、以下のような専門家へ手続き業務を依頼するため、遺産総額の数%程度の高額な費用がかかります。

  • 弁護士
  • 会計士
  • 税理士
  • 不動産鑑定士

なお、通常10万ドル以下の現金や家財などの動産を相続する場合はプロベートが不要となりますが、不動産は金額に関係なく必要です。 

相続する方の時間と費用の負担が大きいため、プロベートを回避する方法を知っておくことをおすすめします。

ハワイ不動産の相続でプロベートを回避する4つの方法

プロベートは、アメリカを含む多数の国で採用される相続手続きです。大きな特徴として、裁判所が介入する点が挙げられます。裁判には時間と費用がかかるため、プロベートをせずに済む方法を検討するのが得策です。そこでこの章では、プロベートを回避する4つの方法を解説します。

少額の遺産にかかる宣誓供述書

少額の遺産にかかる宣誓供述書(Small Estate Affidavit)を作成し、回避する方法です。通常、不動産を相続する際には金額に関わらずプロベートが必要ですが、不動産価格が10万ドル以下であれば宣誓供述書を作成することで回避できます。 なお、裁判所からほかの相続人へ通知を出すため、被相続人の死亡から40日間はこの手続きを行うことはできません。少額の遺産にかかる宣誓供述書を作成することで、プロベートに比べて金銭的・時間的な負担を大幅に削減できます。

生前信託(リビングトラスト)

生前にトラスト合意書を作成することで、プロベートを回避する方法です。日本語では生前信託と訳されるリビングトラストを設立し、相続対象財産を移して管理します。遺言書とも似ていますが、どちらかというと財産の管理会社をイメージすると分かりやすいです。

財産が個人の財産ではなくリビングトラストの財産となるため、プロベートの対象財産はなくなり回避できるという考え方です。リビングトラストには不動産をはじめ株式や預金口座なども入れられますが、設立した国の財産しか入れられない点に注意が必要です。

合有所有(ジョイントテナンシー)

不動産の所有形態を合有所有(ジョイントテナンシー)にすることで、プロベートを回避する方法です。1つの財産を1人ではなく複数人で所有することで、仮にそのうちの1人が亡くなったとしても、残された人に所有権が移ることになります。

この方法であれば、現地の弁護士を通して持ち分の移転登記をするだけでよく、プロベートは必要ありません。注意点が必要なのは、夫婦名義のジョイントテナンシーにする場合です。ハワイ不動産の取得費用を全額夫が負担した場合、妻は対価なしに不動産の権利を得たことになり贈与税がかかります。

死亡時譲渡証書(TODD)

死亡時譲渡証書(Transfer on Death Deed)を作成し、プロベートを回避する方法です。あらかじめ財産の受取人を証書に記載しておくことで、元の持ち主が亡くなった際に名義変更手続きだけで所有権を引き継がせることができます。

生前に何度も修正や取消を行えるなど、柔軟性のある方法です。ジョイントテナンシーに見られた、贈与税の問題が発生しない点もメリットです。ただし、ハワイ州ではこの制度が利用できますが、州によっては存在しないことがある点は留意しておきましょう。

ハワイ不動産の相続税に関するポイント

ハワイ不動産を相続する際には日本とアメリカ両国の税法が適用となり、基本的にはそれぞれの国で申告が必要です。ただし日本とアメリカで結ばれた租税条約により、正しく対応すれば二重に課税されることはありません。ここでは、二重課税を防ぐためのポイントを2つ解説します。

日本とアメリカの税法が適用される

日本では、相続が開始してから10ヶ月以内に「相続税」に関する申告を行う必要があります。一方、アメリカでは9ヶ月以内に「遺産税」に関する申告書を提出します。名称の違いでわかるように、日本は被相続人に対して税金がかかるのに対し、アメリカでは遺産に対してかかります。まずは両国で申告が必要となる点をおさえましょう。

また、日本における相続税の計算時には、不動産の価格を決める際に「固定資産税評価額」が用いられます。固定資産税評価額とは、算出するための基準となる資産の価値を表した数値です。時価の8割程度の額になるよう決定されているため、相続税対策になるケースがあります。一方でハワイにおける遺産税の計算では、不動産価格は「時価」が用いられます。

相続税申告で税額控除を行う必要がある

ハワイ不動産を相続した際には、相続税申告時に「外国税額控除」を利用するようにしましょう。外国税額控除とは国際的な二重課税を調整する目的で、外国に納めた税金を一定の範囲で控除できる仕組みを指します。この控除を適用することで二重課税を防げます。 

通常、相続税は基礎控除(3,000万円+相続人の数×600万円)を差し引いてから算出します。さらに外国税額控除を適用すれば控除限度内にはなるものの、すでに外国に納めた分の税額相当分も差し引くことになるため、結果的に二重課税を回避できていることになります。

日本での相続税申告時には、二重に税金を納めることがないよう必ず外国税額控除を行いましょう。

まとめ

ハワイ不動産を残して持ち主が亡くなった場合、該当する不動産については米国法にのっとり相続手続きを進めていくことになります。

具体的には、現地での裁判手続き「プロベート」が必要です。プロベートの手続きは複雑で時間と費用がかかるため、可能な限り回避することをおすすめします。手段は何通りかあるので、ご自身に合った方法を検討する必要があります。

税金に関しては、日本の相続税とアメリカの遺産税がそれぞれかかるため、申告を忘れずに行いましょう。二重課税を防ぐため、相続税申告の際に外国税控除を活用することも重要です。